御府内８８札所(1)

１日目

平成２７年７月３１日

　　正午丁度に地下鉄泉岳寺駅に到着。
　　マンション建設反対の看板の立つ門前を左に折れ、茹だる暑さの中　急坂を登って　御府内８８札所の1番札所　高野山東京別院に到着。
　手入れの届いた広大な境内には人影なし。　手水にて両手を清め、本堂に入る。
　空調が程よく効いており、左程暗くはない。　外陣　畳上に先着の御婦人が１人頭を垂れて祈祷中。　手前の椅子席には別の老女が正面御本尊に向かい静かに座している。
　納め札を入れ、傍らの灯台に蝋燭を供え、靴を脱ぎ、正面本尊に香を供え、賽銭を置き、りんを鳴らし、観音経、心経を読誦する。
　回向文を唱え、退出する際、ふと見ると　先程の老女が堂内の両端を何事か念じながら往復をしている。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　高野山東京別院本堂

　（堂内にてお百度参りをしているのかと感じたが　そのまま本堂を出、傍らの寺務所にて納経帳を買い求む。
　　係りの女性は『これから　他の札所にも参りますか？』と尋ね、つり銭の１０００円札を態々
１００円硬貨に崩して頂いた。
　御守り、蝋燭等と一緒に並べられた中からガイドブック『江戸御府内八十八ヵ所めぐり』を
　巻末のマップが重宝と感じたので合わせて購入し、打ち水のされた境内に出、伊良子坂に向かう。

途中　餅菓子屋に寄り、豆大福を購入しようとしたが、売り切れとのこと。魚藍坂下から古川橋に出る。
炎天下、日陰を求めて、先程購入したガイドブックのマップを頼りに明治通りから１本北側の平行に走る路地を歩くが袋公路となり、Uターン。
再び明治通りに出、急坂を登り、５番札所延命院に到着。
八十八札所の石碑と損傷した鉄製車留の奥に居住舎を兼ねた本堂がある。
呼鈴を押しても応答なし。玄関脇の窓の柵にレターボックスが立て掛けており、内部に交換用の御朱印帳の用紙が数枚収納されている。
参拝者は適宜用紙を交換し、納経代を賽銭箱に投入せよとの紙片も添付されている。　
　承知して本堂玄関前にて観音経の偈、心経を読誦し、納経帳用紙を交換し、御賽銭を投入して退出。
　　　　　　５番札所延命院山門と本堂

　　予定では魚藍坂下まで戻り、桜田通り沿いの三田の五札所を順に慶大の校舎まで巡る予定であったが、照り返しの厳しい古川橋交差点で信号待ちをしていると、六本木ヒルズ行きの都営バスが交差点に進入するを認める。　刹那的に目前のバス停に歩み、即乗車。

　　冷房の効いたバスは心地よく、汗を拭い、喉を潤し、ガイドブックに目を通す裡に六本木五丁目のバス停を通過する。
　　やむを得ず、ヒルズ終点まで乗り、案内係に訊いてテレビ朝日通りに出る。
　　相変わらずの茹だる様な暑さ、昨夜確認済みの麻布消防署を先ず目指す。歩道には警察官が目立つ。この先に某国の大使館が在るからであろうか？
　麻布税務署の略正面に位置する２７番札所正光院はこれまで巡った江戸３３観音、豊島８８札所の寺院に比して、特記事項なし。
　　扉を閉ざした向拝にて読誦し、住職の奥さんから　予め記されている御朱印用紙を受領。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２７番札所正光院本堂

　再度立哨中の御巡りさんの脇を抜け、六本木交差点から五丁目バス停前に至り、左折する。　

　　昨夜　予めインターネットで　目星を付けていた地点に到着。
　墓地があるため一周したが該当寺院なし、通行中の近在の人　数人に寺院の名を尋ねても首を傾げるのみ。

　　開店前の飲食店従業員も　『３丁目１５番地４号』　が　何処かは判らないという。
　再度　五丁目バス停前の路上案内板で確認したが明示なし。
　目の前の和菓子屋さんに入り、女店員に番地と寺院の名を伝えると、奥に声を掛け、50前後の男性（店主？）が出てきた。
　ガイドブックを開け、写真を示しても見たことが無いと言う。
　スマホを取り出し、日陰の場所に移動し、住所を入力し、画面を確認して首を傾げている。
　　やがて　私に向かい、先程の墓地の右脇の路地を曲がると在る筈と自信なさそうに云う。　
鄭重に礼を述べ、教えられたとおり、金網で覆われた小公園を横断して右折すると　確かに６番札所五大山不動院が在った。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　６番札所不動院ビル
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　正門扉は開かず、脇に貼紙があり、月に1回は講が開かれるとのこと、　江戸３３観音5番札所小伝馬町大安楽寺の住職が当院の住職を兼ねているので、御朱印はそちらで受領するように等が読み取れる。
　　玄関左には不動明王石像が立つ。　目黄不動とも記されているが平井、三ノ輪との関連性不明。　四国８８札所31番札所五台山竹林寺との関連性も不明。（　後日、小伝馬町に出向き、御朱印を受領の際、五大山の意味をうかがう、詳しくは　下記注１参照　）
　　要領を得ないまま　正門扉前にて観音経の偈、心経を読誦して　心願し　写真を撮って　六本木五丁目バス停へ戻る。

　　炎天下、時間をかなりロスしたため、愛宕坂へはバスを使用と思ったが、バスダイヤに不安があり、歩く気力なく、　神谷町まで一駅日比谷線に乗る。
　先日詣でた江戸33番札所天徳院の門前を通り、NHK放送博物館下のトンネルを潜って左折して67番札所真福寺に到着。
　高層ビルの2階へ外部正面から直接石段にて上れる本堂の向拝にて読誦。
　　1階事務室（京都智積院東京別院とのこと）にて御朱印受領。
　　ガイドブックマップを見て鏡照院に向かう。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　６７番札所真福寺（高層ビル内本堂）

　これまでの各札所巡りの経験から　札所とは、
　① それなりの面積の敷地（多くは墓地を含む）を有し、周囲は特色ある塀に囲まれて居るため、街中に在っても遠くから正門らしき場所を推定できる。
　② 近辺にて近在の方に所在を伺えば10中八九承知して方向等を指し示して頂ける。　等のため、事前に大凡の位置を特定しておけば、さして迷わず到着できる目的地であった。

しかし、　今回の６番札所のように、所在地が従来の寺町地区、一般住宅地区では無く、盛衰浮沈の著しい新興商店街では　　事前に（ランドマーク的な）特徴を把握しておかないと（相手方に電話が通じない場合は尚更）　到達は容易なことではない。
　この　同じ事態を今回は同じ日に２度経験することとなった。
　墓地を有さず、敷地一杯に建てられた低中層小型ビジネスビルの何処か一角に目的の寺院が存在していると予測し、確認の電話が効かない場合、通行人不在な街角にて目的の寺院に到達するノウハウは　これまでの100観音巡り等の経験からでは得られない。
　　各ビルの壁に貼られた　丁、番、号の数値を読み取り、目的場所の丁、番、号に合致する区画を予測することは　午後四時までに到着せねばならない制約つきでは　かなり厳しい。　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ビジネスビル１階の２０番札所鏡照院

　　到達をほぼ断念しかけたとき、偶然　目の前のビルの非常口から６０前後のワイシャツ姿の男性が（多分喫煙のために）姿を現した。
　　『此の辺りにお寺さんはありますか？』の問いに男性は『お寺さんらしき建物はその角を曲がった先　右側にありますよ』と対応。感謝！
　確かに、通りに面したビルの一角に門も無く、引戸を開けた状態にて20番札所鏡照院があった。
　　声を掛けても応答無く、止む無く玄関前にて偈を唱えだして暫くすると奥から男性が現れた。
　　差換用の御朱印を受領する。　内幸町駅まで歩き乗車、帰宅。

　反省、　これまでの巡礼では　ありがたい事に特に経験せずに巡れたが、
　今後（御府内８８札所では特に寺院の立地場所からして）同様な事態が予測されるため、
荷物にはなるが　巡礼には iPad を携帯使用することにする。

　泉岳寺駅から内幸町駅までの歩数は１万６４００余歩

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注１．後日江戸３３観音５番札所大安楽寺の住職に伺ったところ、五大とは五大明王とのこと、
（　不動明王、降三世明王、軍茶利明王、大威徳明王、金剛夜叉明王（東密系）、烏枢沙摩明王（台密系））　　中国の五台山、四国高知の五台山とは別