御府内８８札所（５）

5日目

平成27年８月１１日

　iPad をバックに入れ、本郷三丁目駅から湯島小学校を先ず目指したが、小学校よりも早く、該当寺院と思しき巨大な屋根を望見。
　広大な敷地の28番札所霊雲寺境内に西側通用門から入る。
　とにかく広い。浅学な自分には比較の対象、表現の手法が判らないが、浅草寺や高野山東京別院は別として、護国寺、伝通院と同規模級の本堂と思う。
　少なくとも　豊島８８札所とこれまで巡った御府内８８札所の中でこれほどの広さと豪壮さを持つ本堂を自分は知らない。
　南面する山門から数十メートルの間隔を擁して建つ本堂は三方を回廊で囲み、回廊の何処からも畳敷きの外陣に入れるように、引戸は全て開かれていた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　28番札所霊雲寺本堂

　内陣中央には何故か本尊が二体左右に並ぶ。
　内陣では御住職？が学僧？に教示をされていたが、石段を昇って回廊に立つ自分を認め、奥に声を掛け、作務衣姿の中年の僧を呼んだ。　
　来意を告げると、現在本尊前にて教育中なので、お経を上げるのはこの辺りにてと告げられる。　了解して、靴を脱ぎ、外陣の隅に昇って読誦。
　読誦後、先程の僧に何故本尊が二体並んでいるのかを伺うと、本堂左前方に案内された。　　　左前方の壁には大凡２メートル四方の極彩色の金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅が掲げられており、僧が言われるには両曼荼羅の中央には大日如来が描かれている。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　金剛界曼荼羅の一例　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　胎蔵界曼荼羅の一例

　　当寺の本尊は両方の曼荼羅の各中央にある大日如来なので、各１体ずつを安置しているとのこと。
　　両曼荼羅には夫々描かれた　如来、菩薩、天、王　等の図絵の脇に名称が記されており、見飽きる事が無かった。　
　　又、大日如来と釈迦如来の形状の大きな違いは両手の組手にあり、その違いをリセットしてしまうことから『　お釈迦にする　』　の言葉が生まれた等の挿話も伺った。　
　　感謝！　札所巡り冥利に尽きる。

　３２番札所圓満寺へは霊雲寺山門から南へ真っ直ぐ。
　蔵前通りを渡ると本郷通りに面しておむろビルがある。

　　ビル横に仁和寺東京事務所圓満寺の看板。
　１階入口横のインタフォンを押しても応答無し。
　戸惑っていると、３０前後の男性が会釈してドアを開けてビルに入ろうとする。
　つられて一緒にビルに入り、男性に訊くと、『お寺さんは８階ですよ』　とのこと。　
　８階エレベータを降り、改めてドア横のインタフォンを押すと　即　ドアが開き、中年の女性が応対。
　『本堂は９階なので、お参り後はそのまま　お帰りになって結構です』　とのこと。　御朱印を受領し、９階に昇る。
　本堂入口に昔ながらの札所石碑が設置されている。
　空調の効いた本堂の外陣に入り、読誦後、お手洗いを借用して退出。ビル１階のドアは自然と閉まる。　
３２番札所圓満寺おむろビル

　iPad の画面を睨みながら進み、思ったより早く、３４番札所三念寺のビルに到着。　　　呼鈴を押して来意を告げると扉を開けて中年の女性が玄関内に招き、お参りは其処の大師さんの前でと言われる。
　見ると下駄箱の上に大師像が賽銭箱と共に在る。　
　了解して三和土の上にて読誦。　退出。　　眼前に東京水道公園が在り、開園時間の表示看板が掲げてあるが内部に人影無し、急ぎ壱岐坂を下る。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　３４番札所三念寺のビル前

　子供たちの歓声かまびすしい遊園地の脇を通り、後楽園駅の前から礫川公園に入る。

　正面に西洋風の段差ある水路が見えるが　過って見た記憶がある慰霊関係の碑が見えない。

　一旦春日通りに出て、東京都戦没者霊苑に入る。

　　昔、祖母と一緒にお参りに来た時以来
で、当時の面影皆無。
　勝手がわからず管理室にて概要を伺
い、祈祷。
　賽銭箱の類一切無し。　静寂そのもの。
　管理室棟に戻り、２階の遺品展示室に
て遺品や南方での慰霊団の写真を見る。
　安井昌二主演の映画ビルマの竪琴を
思い出す。
　現状を思う。
　供花を申出、パンフレットを預かり退出。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京都戦没者霊苑

　　みたび、iPad の画面を睨みながら８６番札所常泉院に到着。
　　納経所と貼紙のある庫裏にて来意を告げると向かいの建物を示し、２階が本堂とのこと。
　　承知し、外階段で２階に上がり賽銭箱前の施錠された障子扉の前にて読誦。
　　庫裏に戻り、大師堂は山門右手の御堂かと確認すると御堂は聖天さんで　大師堂は門の反対側とのこと。　

　　確認すると高野山開創1100年と彫られた台座上の大師石像が４本柱で建つ覆いの下に鎮座。　御真言を唱える。
　次の７９番札所専教院へは安藤坂経由が良いのか茗荷谷駅経由が良いのかを伺う。

　何時も、茗荷谷駅から拓大を左に見て行くとのこと。　
　礼を述べ、春日通りへ戻る。
　富坂上から都営バスに乗り、茗荷谷駅で降りる。
　直後からiPad の画面を頼りに歩き、常泉院の言葉とは逆に拓大を右に見て時計周りに廻るコースで、途中一度も通行人等に尋ねることなく７９番札所専教院前に到着。
　ＧＰＳ機能を有するこのガイド機の能力に今更ながら驚く。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　８６番札所常泉院

　　このタブレット型端末器を活用しての札所巡りは　従来の（２輪車遍路を含む）歩き遍路の慣習を一変させることを確信する。
　未踏の地に信頼性の充分ではない冊子等を片手に、地元の方の好意を頼りに足を踏み入れるという。一種独特な高揚感は　この機器を使いこなすことでもはや味わうことは出来ない。

　車ナビに依存した車遍路の方々は既に経験されておられると推察するが、結願時の達成感も大きく変化するであろう。

古来　橋が架かり、隧道が掘られ、新道が拓かれる度に　巡礼者達は同様なことを感じたかと思う。　
今後、この機器の更なる普及の結果、（２輪車遍路を含む）歩き遍路がどのように興隆衰退するか見守りたい。

３階建て集合住宅然の１階玄関に出てきた男性に来意を告げると　
『（外階段を使って）２階本堂に上がってください。御朱印帳も箱に入っています。（納経料は）賽銭箱が在ります。』と言う。

　２階に上がり、ベランダ伝いに本堂前に出る。
施錠されたアルミサッシのガラスドア越しに内部の祭壇が見える。

ドア手前賽銭箱の隣の机には５番札所延命院と同様、（多分差換用の御朱印帳が入っているであろう）菓子缶が置かれている。
本日最後の札所で時間にも余裕があったため、輪袈裟を着け、数珠を手に、賽銭を投じた後、浅草寺読誦会にて受領の観音経経文を懺悔文から順に読誦。
　偈文の途中にて本堂内部に隣室から御婦人が現れ、解錠してガラス戸を開き招き入れる。
　会釈して内部の土間に入る。
　『御朱印帳は？』の問いに傍らのバッグから取り出して提出すると、受け取り、隣室に姿を消した。
　以後は土間より、御本尊に正対して、経文を読誦。　御真言を唱える。
　間もなく　御婦人が綴じられた御朱印帳を両手に隣室より現れ、ご挨拶を受けた。　江戸川橋までの概略道順を伺い礼を述べて退出。
７９番札所専教院玄関前の碑

　御婦人からの情報とiPad の威力で専教院から１０分足らずで江戸川橋バス停に到着。

本郷三丁目駅から江戸川橋バス停まで、１２４００余歩

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