御府内８８札所（１３）

１３日目

平成２７年１０月２４日

以前、台東区と荒川区の双方の観光担当の課が共同発行した『日暮里・谷中散策マップ』に必要事項を追記し、東大農学部前バス停から不忍通りを横切り、言問い通りの坂道を登る。
　途中亀戸駅行きのバス（浅草寺北側の浅草二丁目バス停経由）の時刻表を確認すると３０分に１本の頻度。
　あまり期待はできないな！と思案しつつ交番前を通過して４９番札所多寶院に到着。
　正面本堂にて読誦。朱色の旗が翻る左隣の吉祥天の堂にも拝礼し、右棟の寺務所にて御朱印を願う。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　４９番札所多寶院本堂

　応対の婦人は提出した交換用紙を手に一度奥に退いた後、即現れ、差し出す。
　礼と共に確認すると日付が１６日となっている。
　恐る恐る日付の違いを申し出ると　即その用紙を手に奥に入り、２４日と記載の交換した用紙を差し出す。
　再確認すると今度は平成の年度の欄が空白のまま。
　再度　お願いして二十七年と追記して頂く。

　お寺さん以外の建造物皆無のこの地区をマップを頼りに５３番札所自性院に到着。
　門を入ると　右手に本堂、左手に観音像、正面が庫裏で中年の女性が境内の草花に水遣りの最中。
　本堂内にて読誦は可能ですか？と伺うと、本堂の前にてとのこと。
　ガイドブックには戦前の映画『愛染かつら』に縁が有ると記されているが　境内に愛染堂は無い。観音像の右横に桂の木が植栽されているが、樹齢８０年を越しているのか否か　自分には判断できない。
　向拝にて読誦後、先程の女性の『お気をつけて！』の声に送られて退出。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　５３番札所自性院

　５５番札所長久院は自性院の一つ先の隣、先程の多寶院とは背中合わせに位置している。
　山門の板扉には敗走する彰義隊兵士に向けた鉄砲の流れ弾の貫通の跡がある。
　この狭い路地にて通りに面したこの戸に　どのような場所から小銃を撃ったのか興味が湧く。
　本堂、大師堂　ともに扉は施錠されており、開扉不可。
　各向拝にて　観音経全巻、心経等を読誦後、庫裏に声を掛けると、即、扉が開き、御朱印受領。お寺さんの沿革を記した小冊子等も受領。
　本堂傍らには石製の閻魔大王像が在り、写真を撮らして頂く。
　山門を出て右折。右隣もお寺さん。　通りの突き当りが次の目的地、６３番札所観智院。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　５５番札所長久院境内石製閻魔大王

　６３番札所観智院は団子坂下交差点からの坂道の延長上に在り、境内は幼稚園の庭の一部を兼ねているようである。
　正面に本堂らしき建物が建つが、境内入ってすぐ左に不動堂が在り、柱に『六十三札所』の札が掛かっている。その隣が棟続きで大師堂。
　此処が札所？　と疑問に思い　ふと見ると隣棟の寺務所から初老の男性が　当方を見ている。
　会釈して立ち入り、『あそこが８８札所の札所ですか？』と訊くと『そう、あそこが札所でその手前が大師堂』との応え。『御本尊は？』と伺うと『大日如来』とのこと
　　　 63番札所観智院不動堂と大師堂

　『　他の札所巡りの皆様はどうお参りをされているのですか？　』　と重ねて伺っていると奥から丸顔の男性（後日、思うに、当院の御住職）　が現れ、『　みなさん、其処の不動堂と大師堂にお参りしてます』と応じる。
　『本堂にお参りしなくともよろしいのですか？』　と　重ねて伺うと、『それは　自由です　』　と言われたような記憶がある。
　釈然としないが『兎に角、お参りを済ませて、復、参ります。　』　と寺務所を出、　本堂の柵の前にて、ひとまず、題目、光明真言を唱え、祈願し、続いて不動堂の前にて　心経、不動真言を、大師堂の前にて御宝号、題目を唱え、念じた後、寺務所に戻り、御朱印帳を提出する。
　丸顔の男性が、次の間にて筆を走らせ、初老の男性が　その上から朱印を押して、綴じ直し、大日如来と梵字記載の散華と季刊誌『光明』を付して返却される。
　帰り際に山門横に六地蔵を認める。

通りに沿って団子坂下方面に数十メートル歩くと、明王
院。
　境内に入り寺務所の前に老婦人が一人佇んで居る
のを認める。近づくと『さっきから呼んでいるんですが、
出て来られなくて　』と訴える。
　見ると横の立て看板に『〇〇様　法要　午前十一時』
とある。　時計を見ると１０時５５分。　法要前の建込中
と判断して、次の予定の加納院に先行する。
　６４番札所加納院は本堂前に柵が設置されておら
ず、試しに正面引き戸を引くと10cm弱移動し、内部を
伺う事が出来た。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　６４番札所加納院本堂

　僅かな隙間を介しての正面の仏像に経を読む。長久院と同様、良く手入れのされた植栽越しに
庫裏があり、御朱印を待つ間、中年男性二人づれが山門を潜り、直接、庫裏前の自分の前に来
て『御朱印は貰えますか？』と問う。
　『今、読誦が終り、待っているところです。本堂の扉は僅かですが開きますよ！』と、暗に先に
向拝でのお参りを促したが、意に介しないように、『実は直ぐそこのお寺で御朱印を断られたの
です。』　と言う。
　怪訝な顔をすると、彼らは私に納経帳を見せ、８８札所専用の御朱印帳では無いと受け付けな
いと云われたと言う。
　たしかに、納経帳の最初のページからは鎌倉の寺院の名が読み取れる。

　彼らに私の納経帳を見せ、『１番札所の高野山東京別院にて買求めました』と告げる。
　奥から戻ってきたお寺さんから差替用の御朱印を受領し、境内に出、本堂等の写真を撮っていると、彼らも出て来て　『御朱印は断られました。』　と言って、一足先に門外に出て行った。
　山門を出、左折すると写真のような土塀が在り、いくつかのグループが写真を撮っている。
　成程と、自分も記念に写真を撮る。
　先程からに比べ、カメラを手にした観光客が目立ち始めた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　４２番札所観音寺の土塀

　マップに拠ると　この土塀は次の目的の寺、観音寺であるが、入り口が見当たらない。　偶々来た郵便配達のバイクに聞くと　山門はこの先、通りを左折すれば在るとのこと。了解して左折すると、前にも増す、観光客の群れ。

　山門脇に『赤穂浪士ゆかりの寺』の立て札が在る。
　本堂正面の柵には注意書きが吊るされている。
　読むと、その中の１節に　『　お参りの前に手水にて　手を清め、口を漱ぐ　』を意味する文言が在る。　手水は何所かと見廻したが分らず、左端に庫裏を認め、中の係員に、『あの注意書きに記された手水は何所にあるのですか？』と訊く。
　『あの注意書きは近所の小学生が作ったもので、このお寺に手水はありません』とのこと。
　失礼なことを伺ってしまったと気付いたが後の祭り。　ひとまず、読誦のために本堂前に戻る。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　４２番札所観音寺本堂

　本堂、および　観音堂の前にて読誦。再度庫裏に立ち寄り、御朱印をいただく。
　先程　御朱印を断られたと云う　見ず知らずの男性に会ったと話すと　『８８札所ですか？』と訊いてもキョトンとしている人には御朱印は差し上げないことにしているとのこと。

　先程の５７番札所明王院の山門前に戻る。
　時刻は１２時１０分。　丁度　喪服姿の一団と壮年の僧侶が出て来る処で、最後に出てきた先程の老婦人から『法要が今おわりましたから、大丈夫ですよ』　と声を掛けて頂く。
　施錠された寺務所に来意を告げ、出てきた自分と同年輩の婦人に納経帳を託し、なんとなく、本堂に入ることの許可は求めず、本堂及び、大師堂の各向拝にて読誦し、寺務所に戻る。
　扉はまたも施錠されていたが、呼鈴を押すと即、扉が開き、盆上には、綴じられた納経帳と接待用の喉飴２個が用意されていた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　５７番札所明王院本堂と大師堂

　法要のために再度訪れたことへの労いの言葉を頂き、つい、『　この谷中地区の札所では、８８札所専用の納経帳以外は御朱印を断っているのですか？』　と尋ねる。
　婦人は　そのようなことは無いと言い、神仏分離令が出るまでは、神社と一緒の扱いだったので、神社の御朱印が押された納経帳でも関係なく受け付けていると言い、逆にそのような札所がこの谷中地区に在るのかと質問された。
　聞けば、この１０年、急激に御府内８８札所で訪れる人が増え、春、秋は平均１日４～５人は来るが、それと共に、用もないのに境内に入って来る人も増え、物騒なので先代が亡くなった後は玄関も常に施錠している。
　団体で来られる場合、要請されれば、本堂内にての読誦にも対応していると言い、そこで改めて私に対し、本堂内にてお参りされますか？と問う。
　恐縮し、申し訳ありませんがと　お願いし、廊下伝いに本堂に案内され、正座し、ご好意に感謝し　改めて　偈と心経を唱えさせていただく。
　その後　金無垢の前立の立像がつい最近修復されたものであるとの経緯等を伺い退出。感謝。
　明王院山門前が台東区運営の１５分間隔シャトルバス『めぐりん』の停留所になっており、先程の都バス使用予定を取りやめ、浅草六区へ直行、伝法院へ向かう。

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